日汉翻译:翻訳で文名を売るぐらいずるいことはない。他人の思想で他人の文章に、左から右に書いたものを、右から縦に機械的に引き直すだけの労だろう、電話機や写字生と大して相違するところはない、と語る人がある。少しも翻訳したことのない人、殊に外国文を読まぬ人にこんな考えを持つ者が多い。それは大なる誤りである。思想は別として、単に文章を書く上から云えば、翻訳は著述よりも遥かに困難である。少なくとも著述に劣るところはない。少しく責任を重んずる文士ならば、原著者に対して、読者に対して、その苦心は決して尋常なものではない。 (幸徳秋水『翻訳の苦心』による)