「あれまあ」 と、妻は言った。それから、 「うちだって結構大変なのよ。そうか、どうやらやっぱりあなたはさんが気になってるんでしょう。ここのところさんの話ばかりしているものね。そうかそういえば昔からあなたはああいうタイプが好きだったもんね。」 と、なんだか急に早口になってそう言った。 「ああいうタイプってどういうタイプだよ」 「きんもくせいよ」 と、妻はまたさっきと同じように自分の鼻のあたまのあたりを人さし指でごしごしとこすりながら半分笑って半分真面目に怒っているようななんともフクザツな顔をした。 畑にあるものを黙ってきてはいけないのだ、ということを心の底からわからせるために翌日から妻の徹底した芋教育がはじまった。 「たとえはお芋を畑の人に黙って沢山取ってきてしまうと、取った分だけ取った人が買わなければダメなんですからね。だから今月うちは岳くんが頑張ってくれたおかげでお芋ばっかり買うことになってしまったから、家中お芋だらけでしょ。それだからごはんは当分お芋ばかりですからね...」 と、妻は息子の岳にまず戦闘宣言をした。そしてその日からの料理は本当にすべて芋料理だらけになっていったのである。すなわち、イモがゆからはじまってイモの天麩羅、イモ味噌汁、イモキントン、おやつにはふかしイモをはじめとして大学イモ、スイートポテト、イモカリント、焼イモなどなど、ありとあらゆるイモ料理をもって攻めたてたのである。 この芋攻撃がけっこうきいたのか、三人組による事件はようやくしばらくの沙汰止みとなったようであった。